1969年か1970年に松澤宥さんからいただいた青焼きコピーです。何処でどのようにいただいたかは記憶に定かではありません。この頃、他の方の表現を適度なスタンスを持って理解する力はなく、記されている文言の意味を真剣に考えた事はありませんでした。今の時点でようやく、自分の問題として受け止める事が出来ているようです。
松澤さんのまわりにおられた沢山の作家の皆さんはいかがでしょうか。
フリー・アートへの予感
0 1960年大晦日に零下20°の雪原の中で予感し 1964年6
月4日未明に<非感覚絵画の端緒の発見についての報告>
という小文で 今日の観念絵画の到来および絵画の非実体
化の方向を予言した私は ニル 去る12月13日午后2時
13分に 虚空間状況探知センターにて瞑想中 するどい歓
びをもって70年代のフリー・アート時代について予感した
1 それは無差別の相の下のアートであり
2 あらゆる規制禁制から無限に開放されたアートであり
3 あらためてオム二ポテンス・オブ・ソート(念慮の全能)
を原理のひとつとするアートであり
4 精神のエジャキュレーション(突然の発声)の自在アート
であり
5 作家名も作品名もなくなるアートであり
6 たとえば誰が企画し誰々が出品し何という展覧会でいつ始
まりいつ終わるかわからない展覧会に出品される(展覧会
とか出品とかがまだあるとすれば)ようなアートであり
7 善悪 深浅 長短 男女 往還 彼我 上下 海山 アウ
ン等の消滅したアートであり
8 人類の寂光の幻覚共同体のアートであり
9 はやくも最終美術の様相をおびはじめたアートであり
0 名づけてフリー・アート 1969年末 人類にフリー・アートを
さて、このテキストが書かれてから47年目で2016年です。人類はエゴと憎しみに支配されて日々右往左往しています。色々なアートが連綿とつくられ享受され続けてきていますが、この世にフリー・アートが出現したという話はまだ聞いたことがありません。フリー・アートは松澤さんだけのコンセプトではないはずです。このフリー・アートのように松澤さんは沢山のメモ=作品を私達に無償で託されました。それらの中から改めて自らの糧を見出してみたいと思いました。