会場チラシの表面より
たくさんのコンセプトモデルが出品されていました。その一つ一つを写真と記されている言葉を頼りに曖昧な記憶を並べ替えるなどして、コンセプトである「第三の空間」の一端の一端を学び取ろうと思います。
会場入り口の右の壁の右下に入れないにじり口のような「入り口」の穴が開けてあり、そに壁にロランバルトの言葉が引用されていました。興味深い言葉でしたので、撮影してきたのですが、残念ながらすべてが写っていませんでした。その写真に写された文言を読みやすくタイプして見ました。
入り口
ここから、九つの場を通過する旅が始まる。一つの国、歴史、経験、概念、感性、未来そしておーー。
すき
茶庵、由来、縮図、主題、原理、素材の豊かさと多様性、配置の不規則性、いくつもの効果の調和。
茶庵はほぼ三度あらわれる。まず、あなたの次元の大きさで、次に縮小されて、それから投影され、部分的に拡大されて。
木の幹が桜であろうと銅であろうと構わない。重要なのは間隔や曲線であって、大きさや物ではない。
みちゆき
深さのない線、冷ややかな石の旅路、瞬間の連続。駆け落ち、巡礼、庭—小道、庭—路地、庭—〇〇 。
やみ
数人の禅僧が、暗がりのなかで、背を向けて壁のまえで迷走している。だが能役者は薄明かりのなかできらきらと輝いている。
彼らは死者の世界から来て、橋をわたり、曲を演じるために生者の世界に来て、そして鏡板のまえで、神々のいる暗がりへと帰ってゆく。完全な美が暗闇の中でまたたく。
うつしみ
現代の日本の日常生活。家、室内、室内、調度、廃物、田舎、空間。最高のものと最悪なもの、古いものと新しいもの、美しいものと醜いもの、稀有なものと過剰なもの、気品あるものと卑属なもの。
ひもろぎ 神籬
霧のなかの松、それが空間である。その空間を描いてみなさい。四本の柱と一本の縄で囲みなさい。真ん中の(・・・・ )に一個の石を置きなさい。
前に「神秘」「神聖」を意味するための柵をしつらえなさい。それが神座、神々の部屋である。
はし
橋、箸、端、嘴、梯、ふたつの空間の結ぶものすべて。満たす、浮き出させる、渡る、屏風、彫刻、棚、ひさし。
うつろい
変奏におけるもっとも繊細な頂点。逆光を受けて水面にさざなみの立ったはかない瞬間。光の下で震えるものの眩惑、木、金属、ガラス。
美しいのは桜の花ではなく、花があせてゆこうとする短い時間である。うごめく影は、物のこわばった不変性をこわしてゆく。
虚空の間隔。魂はすでに何かを離れているが、まだべつのものに結びついていない。
でき
への回路。現代の日本もまたこうである。派手な色で、安っぽい材質の、けばけばしい置物。
うもので現代の家はあふれている。なぜ、いかにして、美しい事物から卑俗なものへと堕落するのであろうか。
さび
通り過ぎてゆきものの魅惑、崩壊や古色への感性。それらすべてが、錆びた鉄という些細なもので語られる。
もう一段階すすむと、破滅の光景、混沌として荒廃したままの都市、ヒロシマの末裔。