今年の十日町市展の現代美術、彫刻、工芸部門の審査員を拝命し、本日その任務を果たしてきました。
審査が終わっているので講評を公表させていただきます。
第52回十日町市展審査講評
審査員 堀川紀夫(ほりかわ・みちお)
第4部 現代美術
今は現代アートで世界に発信する「大地の芸術祭の里」となった十日町市の市展に、半世紀前より「新しい美術」「前衛美術」と名称の変遷はありましたが既成の枠組みにとらわれない「現代美術」部門が存在し続けてきていることは深い意味のあることです。中等教育学校の出品がありました。アイデアの面白さを生かすには技術が必要です。挑戦を続けてほしいと思います。
市展賞「変な虫が」
子供の頃に魅せられて遊んだ虫たちへとの世界に誘う秀作です。こどもの絵を中心にし、さまざまな表現技法を組み合わせるアセンブリッジのアイデアと技巧も確かです。
奨励賞「森のファンタジー」
山の藤蔓とケヤキの樹皮を生かしたダイナミックな造形です。樹皮をハート型に切り抜き蔓に沿って張り巡らし、幸せのメッセージのある作品となっています。
佳作賞「gravity」
グラヴィティーとは重力、引力のことです。作品は、黒の画面に針金などで作った作者それぞれの想いを表した形や記号を吊しています。吊すということは重力を利用している技法です。グラヴィティーというテーマの4名の青春のグラフィティになっています。
佳作賞「十日町病院新築工事用クレーン」
機構玩具的なアートです。取り組んでいる人が少なく貴重な作例です。実際に動いているところを見せることを考えてほしいです。
第5部 彫刻
市展賞「夏空」
少年が眩しそうな表情で空を見上げて屹立しています。テーマ「夏空」が素直に見る側に伝わってきます。石膏に薄く彩色を加えて表現効果を高めています。
佳作賞「ひめさゆりの咲く頃」
彫刻しにくいひびのある大理石に挑んでいます。細部の表現不足も見られますが全体として花を持つ女性の豊かなイメージが伝わってきます。
第6部 工芸
市展賞「遊鯉」
高度なすくい織りの技法を使いこなした秀作です。長い時間をかけてこつこつと織り上げた水面に大小色とりどりの鯉たちが生き生きと泳ぎ回っています。
奨励賞「寂光」
皮が付いたままの山桜の枝の又の開き具合を巧みに生かして、円筒形に組み立てています。その枝の隙間に赤、青、白、緑などの和紙を張り巡らせてステンドグラス的な美しさのある照明具となっています。身近な素材を生かす発想の豊かさが感じられます。
新潟日報美術振興賞「古民家へようこそ」
現代風の別荘のような住宅に展開する今日的な生活の夢物語をミニチュアで微細なところまで表現しています。その造形力は確かです。作者の願望と楽しみの世界が素直に伝わってきます。
織物のすくい織りの高度な技法を駆使しています。押さえた色調の醸し出す清らかなリズムが伝わってきます。
佳作賞「おとぎの国へ」
押し花と紙工芸の高度な技法が駆使されています。中央下部に表現されているまむし草の表現は秀逸です。
さて、本日は天皇の即位礼正殿の儀の祝日。自宅近くのスーパーに国旗が掲揚されていました。十日町から帰って8時過ぎに撮影しました。お客はほんの数名でした。